楊令(ようれい)
楊志の息子で幼い頃から武術を仕込まれた若き武芸者。父を失った悲しみを静かに抱えながらも成長し続ける若さと純粋さを持つ。その将来への期待と現在の未熟さの間で揺れる姿が、梁山泊の次世代を象徴している。
第3巻「輪舞の章」
第1章 地稽の星
二竜山の賊に村を襲われ、両親を失った孤児である。虐殺の衝撃で言葉を失っていたが、楊志に拾われ、宋建国の英雄の名を与えられる。
第7章 天満の星
済仁美のもとで健やかに成長し、安丘を訪れた楊志を「父上」と呼べるようになる。楊志の肩に担ぎ上げられて笑い声をあげ、再会の喜びを爆発させる。
第4巻「道蛇の章」
第5章 天殺の星
楊志が梁山泊の頭領・晁蓋らと会談する際、実父ではない楊志を「父上」と慕い、安丘で健やかに育っていることが報告される。
第6章 天速の星
養母の済仁美と共に安丘で暮らしており、訪ねてきた馬桂を最初は警戒するが、次第に一座の手品に興味を示すようになる。再会した時に父を喜ばせようと、一座の者から手品を熱心に教わって習練に励む健気な姿を見せる。
第5巻「玄武の章」
第2章 地闘の星
母の済仁美と共に安丘で暮らし、父から命じられた棒振りの稽古と母からの読み書きの指導を日課としている。馬桂が連れてきた白い犬・白嵐と親しくなり、庭で無邪気に転げ回って遊ぶ子供らしい姿を見せる。
第4章 地空の星
庵を襲った王和の軍により父と母を同時に失い、自身も顔に父と同じ場所の火傷を負うが、石秀に救出される。深い悲しみから一切の言葉を発しなくなるが、石秀から致死軍の短い剣を授かり、父のような強さを求める鋭い眼差しを持つようになる。救出に来た晁蓋からもその資質を認められ、林冲に見守られながら二竜山で暮らすことを決める。
第6巻「烈火の章」
第2章 地文の星
二竜山において、亡き父・楊志の遺志を継ぐため、林冲から容赦のない打ち込みを受ける修行に明け暮れる。言葉を失いつつも強い意志を示し、林冲を父と互角の腕として超えようとする気迫を見せる。新しく着任した秦明とも対面し、父の形見である致死軍の短い剣を佩いた姿で、その不敵な眼差しを印象付ける。
第4章 天猛の星
秦明の従者である郭盛を新たな稽古相手に据えられ、修行を継続する。林冲との激しい稽古の末に彼から抱きしめられ、公淑からは母代わりの慈しみを受けながら、ひとりの男としての覚悟を固めていく。
第7巻「烈火の章」
第5章 地賊の星
安丘の馬桂の宿舎で白い犬の「白嵐」と遊んでいた無邪気な姿が、暗殺の目印にされたという残酷な事実とともに回想される。父母を失いながらも、梁山泊の未来を担うべき過酷な運命の始まりが示唆されている。
第8巻「青龍の章」
第2章 地異の星
生死の境を彷徨うほどの大病を患い、うわ言で亡き両親の名を呼ぶ。秦明や鄭天寿に心配されながら、公淑の看病によってなんとか死の淵から生還する。
第3章 天富の星
意識を取り戻した際、公淑への感謝を言葉にし、秦明から鄭天寿が自分のための薬草を採ろうとして命を落としたことを聞かされる。自らを救うために死んだ男の遺品である蔓草を握りしめ、声をあげずに涙を流す。
第4章 地悪の星
体力も回復し、郭盛との武術の稽古や書見に励む日々を送る。亡き父・楊志や鄭天寿の志を背負い、一歩ずつ男としての歩みを進める。
第9巻「嵐翠の章」
第3章 地微の星
二竜山において郭盛との稽古中に気合を発したのを機に、失っていた言葉を少しずつ取り戻し始める。秦明や花栄からその稀有な素質を認められつつも、梁山泊という環境が彼の成長を歪めることを懸念され、王進のもとで修行するための子午山行きが命じられる。
第4章 地走の星
秦明の命に従い、一人の男として魯達とともに子午山へ向かう旅路に就く。山に到着すると王進に対して堂々と名乗り、解珍から託された仔犬に「黒雲」と名付けて、新たな環境での厳しい修行と生活をスタートさせる。
第5章 地暗の星
王進のもとで心身を鍛え上げながら、修行の合間に農耕を手伝うなど、かつて失っていた子供らしさと逞しさを取り戻しつつある。鮑旭から秦明と公淑が結婚したことを聞かされると、二人を慕っていた彼はその知らせを心から喜ぶ様子を見せる。
第11巻「天地の章」
第1章 地然の星
子午山で王進の指導を受けながら薪割りや書見・焼物作りに励む日々を送る。山を訪れた索超に強い関心と憧憬を抱き、棒術で立ち合うが実力差の前に立ったまま気絶し、敗北の悔しさに涙を流しながらも本格的な稽古の開始を許される。
第12巻「天地の章」
第1章 地健の星
亡き養父・楊志の面影を宿しながら子午山で修行に励んでおり、索超との棒術の稽古では日々その才能を開花させている。子午山での生活を通じて背が伸び、前歯が生え揃うなど、少年として逞しく成長している様子が語られる。
第5章 地隠の星
数ヶ月ぶりに訪れた解珍らと再会し、自身の開墾地で王母のために瓜を育てるなど、自立した生活を送る姿を見せる。王進との命懸けの稽古では、圧倒的な実力差に打ちのめされながらも食らいつき、凄まじい闘気を放つまでになった。
第13巻「白虎の章」
第2章 地祐の星
解珍とともに子午山を訪れた楊春により、以前より背が伸び、驚異的な成長を遂げている様子が報告される。王進との過酷な修行に耐え、気を失うほど追い込まれながらも立ち上がる不屈の精神と、他者を圧倒する武才の片鱗を見せている。
第5章 地退の星
将来の梁山泊軍を担う大将の資質を持つ若者として、かつて共に過ごした郭盛らからも再会を熱望されている。
第14巻「爪牙の章」
第2章 天平の星
十二歳の逞しい少年に成長し、王進のもとで農耕や馬の世話、家事をこなしながら武術の修行に励む。子午山を訪れた張平を兄のような落ち着きで迎え、孤独な少年に愛馬・赤空を通じた心の通わせ方を教える。王進との凄まじい対峙に耐え抜き、最後は川の流れを遡るように泳いで己を追い込むなど、非凡な素質を磨き続けている。
第15巻「折戟の章」
第4章 天損の星
子午山で弟分となった張平が盗みを働いた際、自らが身代わりとなって村人に打たれることで、少年に恥の心を教える。自暴自棄になり自らの手を切り落とそうとした張平を力強く抱きしめ、孤独ではないことを諭して再起を促した。赤空の出産を助け、自らの過酷な生い立ちを語ることで張平との絆を深めていく。
第6章 地奇の星
張平と共に里の村へ焼物を売りに行き、襲いかかってきた三人の無頼漢を棒一本で鮮やかに打ち倒す。雑貨屋で村人に拒絶された張平の隣に座り込み、彼が自力で信頼を勝ち取る様子を影から支えた。
第16巻「馳驟の章」
第2章 地雄の星
秦明の会話において、子午山にいる近況が語られる。秦明夫妻にとっては息子のような存在であり、かつて二竜山で過ごした日々が懐かしまれている。
第6章 地陰の星
武松と阿骨打の会話の中で、子午山で王進に育てられている姿が回想される。魯達が再会を熱望するなど、梁山泊の次代を担う象徴的な存在として期待を寄せられている。
第17巻「朱雀の章」
第2章 地巧の星
子午山で修行に励む中、病に侵された魯達を迎え、彼の身の回りの世話をしながら梁山泊の好漢たちの志を学び取る。
第3章 天巧の星
魯達の指示で里に降り、初めて女を抱くことで、武術や書物だけでは得られない「人へのいとおしさ」という感情を知り、精神的な深みを得る。
第6章 地損の星
父・楊志の形見である吹毛剣を研ぎ上げ、自らの気と一体化させることで巨大な岩を断つ境地に至る。病に屈せず自らの手で命を絶った魯達の凄まじい「無念」と「志」をその眼に焼き付け、偉大な武人の最期を看取る。
第18巻「乾坤の章」
第2章 地獣の星
子午山を降りて梁山泊に入山し、宋江らと対面して亡き父・楊志の名札を黒字に書き改める。皇甫端の牧で気性の激しい汗血馬「雷光」と出会い、一瞬で心を通わせて自らの愛馬とする。かつての仲間たちとの再会を重ね、林冲との真剣勝負を通じてその成長ぶりを周囲に印象付ける。
第4章 天哭の星
二竜山の援護に回り、初陣ながら騎馬隊を指揮して官軍の将軍・何信と周信を相次いで討ち取る。その戦いぶりは「剣の立ち合い」のようだと評され、天性の指揮官としての才能を周囲に知らしめる。
第6章 地平の星
呉用の命を受け、郝瑾とともに女真の地へ派遣され、阿骨打とともに遼軍との実戦を経験して国家間の戦争の厳しさを学ぶ。銀の搬送任務では燕青らと協力して遼軍を撃退し、阿骨打からも一人の武人として深く信頼される。女真の村が急襲される惨劇を目の当たりにし、曲江への転戦にも同行しながら、自らの戦う意味を問い直していく。
第7章 地角の星
女真の地から梁山泊へ帰還し、呼延灼から騎馬隊五百の指揮を任される。雷光という名馬を駆り、実戦さながらの遭遇戦調練で百戦錬磨の呼延灼を驚かせるほどの変幻自在な動きを見せる。林冲の戦死という組織全体の大きな喪失を受け、呼延灼や史進ら先輩格の将校たちからの強い推挙により、宋江から梁山泊騎馬隊の指揮官という重責を託される。
第19巻「旌旗の章」
第1章 地満の星
故・林冲から託された騎馬隊の練度を高め、決戦への準備を進める。林冲の影を追いながらも自分なりの指揮官像を確立しようと苦悩し、兵一人ひとりと対話しながら真摯に向き合う。焚火を囲んで馬麟と過去や志について語り合う。
第2章 天威の星
師・王進のもとで育った出自が敵将・童貫にまで知られ、期せずして「弟弟子」のような宿縁の相手として意識される。まだ少年のような面影を残しながらも、その指揮能力は童貫を驚かせるほどのものへと成長している。全面会戦では林冲騎馬隊を率い、勝利条件を「童貫の首」一つに絞って少数の騎馬で敵陣深くへ突き進むが、童貫本陣の守りの堅さを痛感する。総力戦では童貫という巨壁を前に己の未熟さを痛感して一時的に意気消沈するが、史進の叱咤を受けて戦士としての再起を誓う。本営奇襲の危機を察知して急行するが、呉用の下した「護衛」の軍令により目前の敵を殲滅する好機を奪われ、戦士としての本能と組織の規律の間で葛藤する。翌朝の決戦を控え、史進と武人としての情誼を交わし、家宝の「吹毛剣」に宿る気を抑えながら静かに闘志を研ぎ澄ませていく。童貫が宋江の首を狙う強襲を仕掛けてくると予測し、愛馬・雷光を慈しみながら、戦場に死が満ちていることを嘆きつつも戦を終わらせるための戦いに身を投じる。朝靄の中で童貫の気配を独断で察知し、地形の不利を承知で全軍突撃を敢行する。自らの中にある兇暴な闘争本能を解き放ち、軍学の常識を超えた決断を下す。童貫の緻密な包囲網に追い詰められるが、索超の決死の救出によって窮地を脱する。仲間の命と引き換えの勝機を胸に刻みながら、林間での遭遇戦を戦い抜く。愛馬・雷光との別れを経て、断崖を攀じ登り一人で本拠地の中心部へ向かい、深手を負った宋江との最期の対面を果たす。自らの内にある「黒々とした感情」の正体を見極めながら、梁山泊の志を託される。
第3章 地醜の星
本営への奇襲をいち早く察知して宋江を救い出すが、呉用の命令で敵の追撃を禁じられ、守備に徹することへの不満を抱え込む。軍議では史進とともに全指揮から離れ、童貫の首だけを狙う特命を宋江から受け、独自の戦い方を許される。
第4章 地明の星
流花寨の戦いと連動した本隊の激戦において、童貫を執拗に追い詰める。ついに一騎打ちの機を得て吹毛剣を振るい、童貫の兜を割って頬に負傷を負わせるが、あと一歩のところで首を奪うには至らない。
第5章 天捷の星
遭遇戦へと転じた最終局面でも不眠不休で童貫を追い続け、極限の読み合いを繰り返す。窮地を救ってくれた索超を失い、梁山泊陥落の合図を受けると、再会を誓う史進に見送られながら独り梁山泊の獄舎を目指して疾駆する。
第6章 天魁の星
炎に包まれる梁山泊に崖を登って侵入し、独り聚義庁の裏で待っていた宋江と対面する。宋江から梁山泊の旗と志を託され、自らの足の腱を切って逃げ場を断った宋江の願いを聞き入れ、吹毛剣で止めを刺す。その後、追い迫る陳翥ら宋軍の包囲を突破し、湖へと身を躍らせて姿を消す。同じ落城の中で呉用もまた聚義庁とともにその命を終えており、梁山泊の最期を見届けた楊令だけが、宋江から託された志を抱いて生き延びる。