林冲(りんちゅう)
元禁軍武術師範代で梁山泊騎馬隊の要。槍術の達人であり、その実力は梁山泊随一と評される。冷静沈着で感情を表に出さないが、義に対しては一切妥協しない峻烈な精神を持つ。
第1巻「曙光の章」
第1章 天罡の星
禁軍武術師範代として、高俅に狙われた師範の王進を逃がすために門の番兵を抱き込むなどの尽力をした。自身の正体を隠しながら軍に留まる道を選んだ。
第2章 天孤の星
魯智深と密会して軍の腐敗を憂い、自身の立場を守るために監察官の李富に賄賂を贈って槍術師範への昇進を果たした。組織内での複雑な立ち回りを続けた。
第4章 天雄の星
高俅と李富の陰謀により、間男の濡れ衣を着せられ使者殺しの罪で捕縛された。拷問に耐え、妻の自害を知って絶望する中、滄州への流刑に処された。
第8章 地霊の星
滄州の牢城で安道全を救い出す使命を帯び、過酷な使役に従事しながら機会を伺った。刺客を返り討ちにした後、安道全と白勝を連れて吹雪の中を脱獄し、宋江らと合流した。
第2巻「替天の章」
第2章 地幽の星
阮小七の家に潜伏して焦燥していたが、安道全と共に梁山湖の山寨(王倫)へ入る。入寨の挨拶代わりに行われた試合で、山寨の槍使い十六人を瞬時に圧倒する。街道で楊志と立ち合うが、その腕を惜しんでとどめを刺さず、見逃す。
第5章 地耗の星
王倫から執拗に命を狙われ、毒を盛られるが安道全と薛永に救われる。宋江からの伝言を受け取り、王倫の処断を決意してその機会を待つ。
第8章 地魔の星
黒い帯を合図に王倫を処断し、新たな体制となった梁山泊で騎馬隊の創設を担う。最後は魯智深に促され、馬を走らせて懐かしい宋江に会いに行く。
第3巻「輪舞の章」
第1章 地稽の星
梁山泊の騎馬隊隊長として、自ら馬を調教し、精鋭の育成に励んでいる。かつて二竜山で戦った楊志の実力を高く評価しており、魯智深からも彼と互角の手練れとして名前を挙げられる。
第2章 天慧の星
青州軍の花栄が北京の盧俊義邸を訪れた際、林冲もまたかつてそこを訪れ、くつろいでいたことが語られる。
第3章 天機の星
梁山泊の軍事力の要として300の騎馬隊を率い、官軍との決戦に備えている。軍師見習いとなった阮小五を預かり、実際に馬に乗って戦う騎馬の機動力と戦術を徹底的に叩き込む。
第4巻「道蛇の章」
第3章 地孤の星
梁山泊の騎馬隊を官軍より速い精鋭へと鍛え上げ、北方の夏津で青蓮寺の闇軍に襲われた致死軍を間一髪で救い出す。作戦を巡って公孫勝と激しく言い争うが、安道全には「俺が死んだら腑分けしてくれ」と冗談を言うなど、過酷な軍務の中でも同志への信頼を見せる。楊志が梁山泊へ合流した際には彼を温かく迎え入れ、志を実現するために共に戦う決意を確認し合う。
第6巻「烈火の章」
第1章 地闊の星
二竜山と桃花山の総隊長として、戦死した楊志の遺児・楊令を実の息子のように厳しく鍛え上げる。
第2章 地文の星
楊令に対し一人の男として向き合い、容赦ない打ち込みを通じて武術の極意と精神を叩き込む。
第3章 地狗の星
梁山泊へ戻り、馬の調教に長けた段景住と共に一千規模の精強な騎馬隊育成に着手する。
第4章 天猛の星
北京大名府軍の攻撃に対し、育成した騎馬隊を率いて敵の牽制を行い、梁山泊本隊を援護する。
第5章 地劣の星
馬の医者である皇甫端の助言を得て軍馬の質を向上させ、大型船による馬の輸送を試みる。
第7巻「烈火の章」
第2章 地理の星
宋江たちが危機に陥っている独竜岡に、漆黒の馬・百里風に乗って単騎で駆けつける。圧倒的な槍の技で官軍の包囲を突き破り、朱仝たちの脱出路を鮮やかに切り開く。各地で官軍がこれまでにない迅速な動きを見せていることを察知し、強い警戒心を示す。
第3章 地周の星
宋江を双頭山へと導くが、真定府の軍が山を狙っていることを知り、それを牽制するために急行する。軍事的センスを遺憾なく発揮し、官軍を翻弄して宋江が双頭山に入るための安全な時間を確保する。後に再び双頭山を訪れ、宋江を三百騎で護衛して梁山泊へと送り届ける。
第5章 地賊の星
梁山泊の九竜寨で、史進の騎馬隊と激しい合同訓練を行い、兵たちの練度を極限まで高める。呉用との戦略会議で「祝家荘」の罠の可能性を議論し、実戦を想定した冷徹な洞察を披露する。段景住が運んできた名馬を検分し、来るべき決戦に向けて騎馬隊の再編を急ぐ。
第8巻「青龍の章」
第3章 天富の星
祝家荘戦の窮地に千五百騎を率いて現れ、宿元景の騎馬隊を粉砕する。宋江と再会し、自らが奪った一千五百頭の馬の処置について協議する。
第4章 地悪の星
家荘軍の扈三娘と一騎討ちを行い、彼女を岩に叩きつけて重傷を負わせる。間者の侯健から、死んだはずの妻・張藍が生きている可能性を知らされ、激しく動揺する。
第5章 地勇の星
祝家荘攻めの最終局面を前に、妻の行方を確かめるために戦線を離脱し、開封府へと向かう。
第9巻「嵐翠の章」
第1章 天空の星
妻・張藍が生きているという情報を得て、戦線を離脱して開封府郊外の屋敷跡へと向かう。そこで索超や呂方と相まみえるが、直後に青蓮寺が仕掛けた罠の屋敷へ突入し、全身に矢を受けて瀕死の重傷を負う。
第2章 地佐の星
索超らに救い出され、梁山泊の医師・安道全による過酷な手術を耐え抜いて奇跡的に命を取り留める。その後、無断での戦線離脱を問う軍法会議にかけられ死刑を宣告されるが、晁蓋の裁定により一年の間、馬糞の始末という懲罰を命じられる。
第4章 地走の星
馬の世話に従事しながらも武人としての誇りを持ち続け、流花寨を訪れた呂方に稽古をつけるなどして心身を鍛える。自らは出陣できないものの、彼の象徴である旗は郁保四によって戦場へと掲げられる。
第5章 地暗の星
怪我が完治し、愛馬・百里風に乗って再び槍を振るう姿を史進らに目撃される。
第10巻「濁流の章」
第1章 地威の星
夜の牧で史進・馬麟と月明かりの下に語り合い、亡き師・王進への思いと武人としての誇りを語る。罰としての屈辱的な任務を淡々とこなしながら再起の時を待っている。
第3章 天祐の星
晁蓋から呼延灼軍の別働隊二千の迎撃全権を委ねられる。禁軍時代の旧知・徐寧を梁山泊へ紹介し、鉤鎌鎗法の伝授を実現させた。
第4章 地英の星
別働隊との戦いを終えて本陣に急行し、包囲された晁蓋を救う血路を開く。乱戦の中で程順を討ち取り、自らを殿として残し晁蓋の脱出を守った。
第5章 地刑の星
雪辱戦で黒備え騎馬隊を率いて鉤鎌鎗法との連携で官軍を粉砕。徐寧とは禁軍時代からの同志として共に戦う。
第11巻「天地の章」
第2章 地全の星
開封府の軍による流花寨への圧力を警戒し、晁蓋の北上を支えるために梁山泊で待機しつつ官軍への牽制を続ける。
第4章 天地の星
黒騎兵を率いて晁蓋の北方遠征に同行し、官軍の精鋭を「あしらう」ような高度な遊撃戦を展開する。史進や晁蓋と焚火を囲んで戦人としての情熱を語り合い、鹿を射止めて将兵に振る舞う。
第12巻「天地の章」
第1章 地健の星
岩山の頂で索超や旗手の郁保四と共に梁山泊を眺め、晁蓋を失った悲憤を抱えつつも、事態に備える冷静さを見せた。流花寨に迫る官軍二万を史進と共に急襲し、これを鮮やかに潰走させた。その後、梁山泊での会議で公孫勝と激しく言い合い、秦明に一喝されてその場を収めた。
第2章 地傑の星
済州攻略から帰還し、船着場で燕青と再会して、騎馬隊に体術を教えるよう依頼した。牧の調練場にて燕青と素手で立ち合い、投げ飛ばされながらもその実力を認め、史進や索超と共に修練に励んだ。
第3章 地正の星
燕青を再び牧に迎え、小舟の上での組打ちや武器を使った稽古を続けた。王進の下で修行中の楊令の成長を気にかけ、かつて自分が徹底的に打ちのめした記憶を史進らと笑いながら語り合った。
第4章 地蔵の星
北京大名府攻略戦において、史進と共に城外の敵軍を攪乱し、官軍が再集結するのを徹底的に阻止した。撤収戦後には朱富の店を訪れ、呼延灼や史進らと酒を酌み交わしながら、関勝の戦法や趙安の動きについて分析を深めた。
第5章 地隠の星
養生所から戻りつつある燕青に対し、未だ手加減をしながら槍の稽古をつけている様子が盧俊義の口から語られた。
第13巻「白虎の章」
第3章 地僻の星
双頭山の窮地を聞き、騎馬隊を率いて現場へ急行する。戦場で朱仝と最後に対話し、彼が立ったまま命を燃やし尽くした壮絶な最期を看取った。
第4章 地飛の星
軍議において、朱仝が死後も戦い続けたことが双頭山を救ったのだと語り、呉用の理屈を諌めて戦の本質を説いた。
第14巻「爪牙の章」
第1章 地急の星
騎馬隊総隊長として、索超や馬麟らとともに日々過酷な調練を指揮し、徐寧が提案した長槍戦術の有効性を厳しく見定める。呉用の命を受け、扈三娘の部隊を双頭山へ派遣することを即座に決断する。
第3章 地短の星
梁山泊での軍議に参加し、済州での不手際を演じた史進を執拗に揶揄して賭けに勝つなど、不敵な態度を見せる。軍律違反の罰として史進を自身の武術稽古の相手に指名し、豪快に笑い飛ばす。
第5章 地強の星
二竜山近辺で活動していたが、聚義庁の指令を受けて双頭山の救援のため急行し、戦局の転換を図る。
第15巻「折戟の章」
第1章 天英の星
双頭山の防衛戦に合流し、董平や史進と共に騎馬隊を率いて六万の宋軍を相手に縦横無尽の野戦を展開する。董平の二本槍の妙技を目の当たりにして称えつつ、厳しい戦況の中で冷静に軍の指揮を執り続ける。
第3章 地遂の星
北京大名府占拠の報を受け、騎馬隊を率いて占拠地へと急行し、軍事的な威圧を加えて宋軍を牽制する。戦後の全軍会議には一番遅れて到着し、戦死した同志たちを悼みながら梁山泊の再建案に耳を傾ける。
第6章 地奇の星
心身ともに衰えていた単廷珪を「虫けら」と激しく挑発し、死域に追い込むほどの打ち合いを通じて、彼の体内に停滞していた生命力を蘇らせる。かつての戦友を立ち直らせるためにあえて非情な敵役を演じきり、見事にその奇蹟を演出する。
第16巻「馳驟の章」
第1章 天貴の星
柴進と再会し、自身の黒騎兵と青騎兵、そして馬麟の部隊のための特別な具足を要求する。色のついた具足で部隊を統一することで、戦場で敵を威圧する効果があると主張し、柴進を説得する。
第2章 地雄の星
高廉の軍に包囲された劉唐らを救うため、最強速の騎馬隊を率いて戦場に現れる。瞬く間に敵を蹴散らし、公孫勝と再会するが、互いに皮肉を言い合いながらも無事を確かめ合う。
第5章 天牢の星
童貫の軍に敗北し、呉用から厳しい査問を受ける史進を弁護する。戦場は数字だけで語れるものではないと呉用を一喝し、実戦指揮官としての誇りを示す。
第6章 地陰の星
査問のあと、落ち込む史進を顧大嫂の店に誘い、共に焼饅頭を食す。敗北も一つの経験だと史進を慰め、最強の敵である童貫との長い戦いを見据える。
第17巻「朱雀の章」
第1章 天立の星
梁山泊の西側で騎馬隊を率い、連日の厳しい調練を通じて兵と馬を極限まで鍛え上げる。高廉の軍との暗闘を想定しつつ、正規軍としての圧倒的な突撃力を維持することに心血を注ぐ。迫りくる戦の気配を敏感に察し、部隊の緊張感を高める。
第3章 天巧の星
盧俊義の埋葬儀式の際、百騎の騎馬を整列させて岩山の上から静かにその死を見送る。感情を露にすることはないが、同志を失った喪失感を胸に秘めながら自らの役割を全うする。葬儀後、直ちに来襲する童貫軍への備えを強化する。
第4章 地捷の星
童貫軍との決戦で畢勝の軍を鮮やかに断ち割り、さらに童貫の本陣へ向けて一直線に鋭い突撃を敢行する。童貫からその武勇を「戦人としての本能」と絶賛されるが、深入りを避けて鮮やかに反転離脱する冷静さを見せる。卓越した機動戦術により、敵の陣形を翻弄し続ける。
第5章 地狂の星
高廉の軍と死闘を繰り広げる公孫勝のもとに間一髪で駆けつけ、圧倒的な機動力で敵を殲滅させる。戦闘後、負傷した公孫勝の折れた脚を処置し、焚火を囲んで彼の凄惨な過去の告白を最後まで聞き届ける。過酷な戦いを共にした者同士、公孫勝と不器用ながらも絆を確かめ合う。
第6章 地損の星
牧を訪れた宋江を迎え、裸馬の乗り方や剣の稽古を見守りながらしばしの平穏を過ごす。しかし、五万の全軍で再出撃してくる童貫軍との最終決戦が近いことを察し、部隊の戦術を再編して迎え撃つ準備を整える。仲間の戦死が続く中、騎馬隊総隊長として最後まで戦い抜く覚悟を新たにする。
第18巻「乾坤の章」
第6章 地平の星
一万騎を超える規模となった騎馬隊の運用を巡り、軍議で積極的な攻勢を主張する。自らが率いる騎馬隊の練度と馬の質に絶対の自信を見せ、宋江を兄のように慕う素直な一面も覗かせる。
第7章 地角の星
本営で待機する中、敵将・酆美の進軍経路に疑念を抱き、戦場に漂う違和感を天才的な直観で察知して独断で出動を開始する。酆美の罠に嵌まって孤立した扈三娘を救うべく、郁保四とともに敵陣へ突撃して敵将の首を落とす。逃げ遅れた扈三娘に自らの馬を譲って逃がし、自らは歩兵の大群の前に踏み止まって、無数の矢を浴びながら意識を失っていくように絶命する。